- 連載第8回(2015.05.13)
- 重要文化財「上鴨川住吉神社」(加東遺産)
さて、第8回の今回も初夏~秋の歴史散策におすすめの神社仏閣をご紹介します。奇しくも2015年は、「播磨風土記編纂1300年」を迎える記念の年。機会がありましたら、奥深い播磨の歴史、文化、名所旧跡などに触れてみてください。
今回ご案内するのは、加東市の北東部に位置する「上鴨川住吉神社」です。34段の石段を登り、集落から少し離れた里山にひっそりとたたずむ境内に足を踏み入れると、神話の時代の「気」が感じられる不思議な空間です。
神社の創建は不明ですが、国の重要文化財に指定されている本殿は、三間社流造(全国で最も多い神社本殿形式)、檜皮葺。鎌倉時代の末期、正和五年(一三一六年)に最初の建造がなされ、室町時代の中期、明応二年(一四九三年)に再々建された約七百年前の建造物が現在に残っています。
本殿をはじめ、拝殿、舞殿、長床、御供部屋、小宮などが境内に建立されていて、古代神社形式を見ることができます。内陣を一段高く作るこの地方独特の形式になっています。
普段は静寂に包まれる境内が賑わうのは、毎年十月第一土曜・日曜に、五穀豊穣、無病息災を祈って奉納される神事舞(国の無形民俗文化財)。
宵宮には、「太刀舞」「獅子」「田楽舞」「扇舞」「高足」などが奉納され、本祭りではこれらの後に、「翁舞」が舞い語られます。この神事舞は、宮座組織によって七百年前から、鎌倉時代の形態を厳格に継承されていて、中世の面影を体感できる貴重な舞踊りとして全国から見学客が訪れます。長年に及ぶ伝承の間に崩れたり、簡略化された面もありますが、能楽の源流である猿楽能の古態を残し、芸能史上に占める価値はきわめて高いものがあります。
神事能面は黒色尉面、冠者面、父の尉面、翁面、王鼻面など十二面が残り、県の指定文化財になっています。
宮座は、若衆、清座、年老、横座によって組織されていますが、宮座に入ることができるのは、上鴨川村七十余軒、住吉神社氏子の中で、この地に生まれた長男だけに限られています。
天を焦がすほどの巨大なかがり火の中で披露される厳かな舞は、一見の価値があります。
JR加古川線「社町」駅下車神姫バス「住吉神社」下車
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